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静脈瘤

福島第一病院 臓血管病センター 小川 智弘

下肢静脈瘤手術

はじめに

下肢静脈瘤の病因は静脈弁不全よる一次性静脈瘤と静脈血栓の再疎通後に静脈弁破壊伴う二次性静脈瘤、動静脈奇形を伴う先天性静脈瘤に分類される。病態は静脈逆流によるもの、二次性静脈瘤に見られる静脈閉塞と逆流によるものがある。また下肢静脈瘤の病変部は、伏在静脈を代表とする表在静脈、深部静脈、穿通枝(深部静脈―表在静脈交通)がある。下肢静脈瘤ではこれらの病因、病態および病変部を考慮した手術法を選択する必要がある。

手術適応

下肢静脈瘤に関する特有な下肢のだるさ、重量感、腫脹、痛み、こむらがえりなどを訴える場合、静脈環流障害に起因する色素沈着、湿疹、脂肪色素変性、潰瘍や血栓性静脈炎、静脈瘤部の外因性出血を認める場合に加えて、美容的問題を抱える場合にも手術が適応になる。一方で、妊娠中や末梢動脈病変、出血傾向、活動性の皮膚炎症疾患、リンパ浮腫を有する場合には手術を控えることが望ましい。

手術法の選択

一次性静脈瘤では静脈逆流遮断、不全穿通枝遮断および静脈瘤切除が考慮される。そのうち静脈高位結紮術、ストリッピング術による表在静脈逆流遮断が最も重要と考えられている。ストリッピング術か高位結紮術かの明確な選択基準はないもの、大伏在静脈径が8-10mm以上の太い静脈瘤に対してはストリッピング術が選択されることが多い。深部静脈逆流を認める場合でも、表在静脈逆流遮断により深部静脈逆流が軽減することから、まずは表在静脈逆流遮断を行い、潰瘍などの慢性静脈不全症状の改善が得られないようであれば、深部静脈弁形成術を考慮する。不全穿通枝遮断は色素沈着、脂肪色素変性、潰瘍などを認める症例に行われる。静脈瘤切除は瘤切除とともに穿通枝遮断することにもなり、表在静脈逆流遮断の付加手術として行われることが多い。 二次性静脈瘤ではまず、弾性ストッキングによる圧迫療法を行う。表在静脈逆流を伴う場合は、側副血行路を考慮した上で、表在静脈逆流遮断を行う。圧迫療法や表在静脈逆流遮断が不十分な場合に、深部静脈弁不全に対して弁形成術、弁移植術が考慮されるが、その成績は良好とはいえない。深部静脈閉塞による静脈うっ滞が強く認められる場合にはステント留置、静脈バイパス術が考慮される。

大伏在静脈に対する高位結紮術とストリッピング術

図1:術前血管造影
図1:伏在静脈接合部付近の解剖

術前に血管エコーまたは簡易ドプラーによる大伏在静脈-深部静脈分岐部、末梢結紮部、ストリッピング末梢部のマーキングが勧められる。 体位は仰臥位にて、麻酔は高位結紮術のみであれば、局所麻酔で、ストリッピング術を行う場合は全身麻酔、腰椎麻酔、静脈麻酔下に行われるのが一般的であるが、大腿神経ブロックや静脈血管周囲の浸潤麻酔の併用にて、日帰り手術も可能である。 皮膚切開は大腿静脈合流部の約1cm下か鼠径靭帯より1横指下に横に置く。剥離はモスキート、鈎などにて行い、大腿静脈合流部まで完全に露出する。切開創が小さいと慣れていても、大伏在静脈の同定を誤ることがあり、大伏在静脈がはっきりしない場合には大腿動静脈、神経が走行しない内側よりアプローチすることが勧められる。 合流部付近の大伏在静脈には、浅腹壁静脈、浅腸骨回旋静脈、外陰部静脈、外側副伏在静脈、内側副伏在静脈が認められ、これらを完全に結紮、切離する。(図1) 合流部は大腿静脈の狭窄に注意しながら貫通結紮を伴う二重結紮、切離を行う。 ストリッピングは従来からのアコーデオン式に静脈を抜去するBabcock式と静脈を内翻させて抜去する内翻式がある。 (図2)

図1:術前血管造影
図2:内翻式ストリッピング術

内翻式はBabcock式に比し、静脈周囲組織の損傷をできるだけ避けうる一方で、抜去中に太い分枝などがある際には途中で引きちぎれる欠点もある。ストリッピングワイヤーを大伏在静脈に挿入し、静脈抜去部位の末梢で外に出す。Babcock式は径1cmほどのヘッドを中枢につけ、中枢から末梢に引き、静脈を抜去し、内翻式はストリッピングワイヤーと抜去中枢静脈を糸にて固定し、静脈を内翻させて抜去する。内翻式ストリッピングでは太い分枝が確認される場合はあらかじめ分枝を切離するか、ストリッピング途中で強い皮膚の引き吊れが認められた際にその部位の小切開にて分枝を切離することで、抜去静脈の途中引きちぎれを回避することができる。途中で引きちぎれても、その後にBabcock式に変更することで、完全な静脈抜去ができる。 ストリッピング範囲は合流部より内顆までの全ストリッピングと静脈逆流部位に応じた選択的部分ストリッピングが行われるが、最近では、術後静脈機能の改善と下腿部の神経障害を避ける点から大腿部の部分ストリッピングが多くなっている。 主な合併症は静脈抜去部の皮下出血と伏在神経障害(感覚神経麻痺)、リンパ漏および創部感染であるが、皮下出血に対してはガーゼやチューブにてボスミン入り(1/2-1A)生理食塩水を抜去部に注入したり、圧迫にて止血を行う。皮下出血が多い場合は、疼痛を伴うが、2-3週後には消失する。伏在神経は大腿神経より分岐し大腿動静脈と伴走し、膝部にて皮下にでて、その後、大伏在静脈と伴走するようになる。そのため、伏在神経障害は膝部以下のストリッピングでは発症する可能性が高くなる。

小伏在静脈に対する高位結紮術とストリッピング術

術前にエコーにて不全穿通枝をマーキングし、小切開による筋膜上穿通枝切離と硬性内視鏡を利用した筋膜下穿通枝切離(SEPS)が行われる。筋膜上穿通枝切離は局所麻酔で、マーキング直上を切開し、その部位の静脈瘤を除去、切離をしながら、筋膜に向かう静脈を切離する。皮膚潰瘍や硬化の直下に穿通枝がある場合には、創部の治癒遅延も危惧される。SEPSは正常部位の皮膚切開にて内視鏡を挿入するため、煩雑であるものの、創部の治癒遅延を避けることができる。

静脈瘤切除

図1:術前血管造影
図3:静脈瘤切除

2-5mmの皮膚切開を静脈瘤上に置き、フックにて静脈瘤を吊り上げ、そこを起点として静脈瘤を除去するのが一般的で、局所麻酔で十分可能な手技である。(図3)

静脈弁形成術

静脈弁は2尖弁で、弁形成術の良い適応は弁輪部拡大による弁不全である。 静脈弁形成術は静脈を切除し、内腔より直接的に形成する方法と、外側より弁胴部の縫縮や筋膜、フェルトなど弁胴部に巻き付け、弁胴部を形成することで弁不全を改善させる方法がある。また血管内視鏡下では、静脈切開をすることなく、直接的な弁形成も可能である。直接的弁形成を行う際には、全身麻酔下、十分に弁を含む静脈節(大腿静脈)を剥離露出し、両交連部で弁尖および弁輪を縫縮し、両弁尖の接合を良くする。弁形成の成否は弁下静脈を虚脱して弁不全を観察するストリップテストにて確認する。


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