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Bentall手術

東京女子医科大学心臓血管外科
青見茂之




Bentall 手術は、1986年に報告された大動脈弁輪拡張症(annuloaortic ectasia: 以下AAE)に対する手術法である。原法は、人工弁付人工血管を用いて大動脈弁置換を行い、冠動脈は人工血管の側面に直接吻合し、そして遠位側吻合を行い、大動脈基部を完全に置換する方法である。最後に瘤壁で人工血管をラッピングすることにより出血を制御する特徴がある。初期には冠動脈口と人工血管の吻合部の縫合不全のため、遠隔期に仮性瘤を形成し、再手術を必要とする症例が報告された。これに対して冠動脈再建法を二層吻合にする工夫により仮性瘤は減少した。

その後、小口径人工血管を用いて冠動脈再建を行うCabrol法やPiehler法※が行われた。更に近年コラーゲンやゼラチン被覆型人工血管の出現により瘤壁によるラッピングを必要としなくなり、Bentall手術における長期遠隔期の問題点の1つである冠動脈口吻合部の瘤化を防ぐのに有利であると思われるボタン法が用いられるようになった。 今回は、現在行っている方法で良好な遠隔成績を収めている方法(ボタン法を用いたPiehler変法)について述べます。

1-1.人工心肺

人工心肺は、大腿動脈か大動脈送血および上下大静脈脱血で開始し、上下大静脈に通したテープを絞めて完全体外循環とする。心機能の低下した症例では右の上肺静脈から経左房左室ベントを挿入する。軽度低体温法を用いて膀胱温を約28℃まで冷却する。

1-2.大動脈遮断、心筋保護

大動脈遮断後に大動脈を斜切開し大動脈瘤壁を左右に展開し、心筋保護を行う。心筋保護は、順行性と逆行性灌流法を併用する。

1-3.冠動脈再建

図2:interposition graft法(*p197)
図2:interposition graft法(*p197)
ボタンを8ミリか10ミリのニットの人工血管でinterposeする。吻合部はフェルトで補強する。
図1:AAE切開法(*p197)
図1:AAE切開法(*p197)
大動脈遮断後に瘤を切開し、心筋保護を行った後に冠動脈をボタンにくり抜く。

最初に大動脈弁を切除し、左冠動脈主幹部の走行を確認した後に、左冠動脈をボタンにくり抜き8ミリか10ミリのニットの細い人工血管を縫合する(4-0PV)。吻合部はテフロンフェルトの短冊で補強する。周囲の剥離は、吻合に必要な範囲で良い。右冠動脈は折れ曲がり易いので可動性が良くなる程度に剥離し再建する。この後には心筋保護液を細い人工血管より注入する(図1、図2)。
※Piehler法-左冠動脈をボタンに切り抜かず、細い人工血管で再建する方法
※※PV=polyvinyliden fluoride suture

1-4.弁付人工血管(flanged type)の作り方

人工弁と人工血管の選択

機械弁が第一選択である。心エコーの弁輪径を参考にして23mm以上の人工弁を入れる。偶数サイズなので+3mmのウーブンダクロン人工血管を選択する。人工血管を弁輪に縫合するため、弁輪が20mm以下でも人工弁は、21mm(SJM-19HP)以上のものを使用できる。スカートは2cmぐらいの目安で3-0テフデック糸の連続縫合で人工血管内に固定する。補強を4箇所に行う。生体弁は、弁付人工血管内でのストレスが大きいため、耐久性が落ちる可能性がある。

1-5.大動脈弁置換

大動脈弁輪をテフロンフェルトプレジェト付の2-0テフデック糸でマットレス縫合する。20針ぐらいかけ、弁輪から出血するのを防ぐ。スカートを弁輪に合わせて1.5cm前後に斜めに切除するが、左室の流出路の方向も考慮し、流れがスムーズになるようにする。人工血管だけに糸を通し、結さつ固定する。弁輪を連続縫合し補強してもよい。

1-6.冠動脈再建の完成

冠動脈ボタンに縫合した人工血管を弁付き人工血管に図の様な自然の角度と短い距離(1~2cm)になるような場所を選び吻合する(3-0PV)。人工血管同士の吻合は、太い糸で行う。

1-7.大動脈との吻合

位側大動脈の拡張していないところを横断し、テフロンフェルトの短冊で補強し弁付き人工血管を吻合する。次に、ホットショットを行った後に、フィブリン糊を縫合線に塗布し、大動脈遮断を解除する。補助循環を30分以上行い人工心肺から離脱する。

1-8.人工心肺からの離脱と止血

図3:再建の完成図(*p198)
図3:再建の完成図(*p198)
冠動脈に血流がスムーズに流れるよう形を工夫する。

人工心肺停止後にプロタミン注入し、吻合部を圧迫止血した後に術野を良く洗浄し、最後に感染対策として瘤壁で人工血管を覆うラッピングを行う。止血目的のラッピングは、仮性動脈瘤の原因になるため行わない。心機能の低下している症例(FS=0.2以下)では60分以上の補助循環後の人工心肺からの離脱やIABPの使用を考慮する必要がある。重症の症例での出血は、血行動態を悪化させる最大の要因となるので、安易に遮断時間を短縮して出血させるようなことがないようにしなければならない(図3)。


【図の説明】
  • 図1:AAE切開法(*p197)
    大動脈遮断後に瘤を切開し、心筋保護を行った後に冠動脈をボタンにくり抜く。
  • 図2:interposition graft法(*p197)
    ボタンを8ミリか10ミリのニットの人工血管でinterposeする。吻合部はフェルトで補強する。
  • 図3:再建の完成図(*p198)
    冠動脈に血流がスムーズに流れるよう形を工夫する。
  • *心臓外科Knack and Pitfall 高本眞一先生監修、文光堂
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