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両大血管右室起始症

横浜市立大学医学部外科治療学
教授 益田宗孝




定義

両大血管右室起始症とは大動脈と肺動脈の両大血管の半分以上が右室から出ている心奇形である。心室中隔欠損を伴っており、大血管関係は正常関係のものと大血管転位型に大別されるが、そのバリエーションは様々で一連のスペクトラムとして考えられている。

分類

図1
図1

心室中隔欠損の位置により4つに分類されている(図1)。心室中隔欠損の位置により手術法が異なることより分類を決定することは手術法を決定する上で重要である。

大動脈弁下型

心室中隔欠損が大動脈弁の下に位置する。漏斗部中隔が中隔縁柱前脚に挿入している。血行動態的には心室中隔欠損症と同様であり、肺動脈狭窄を伴った場合にはファロー四徴症と同様になる。

肺動脈弁下型

心室中隔欠損が肺動脈弁の下に位置する。漏斗部中隔が中隔縁柱後脚に挿入している。通常Taussig-Bing奇形と呼ばれ心内修復が難しい形態とされている。大血管位置関係により正常大血管型のoriginal Taussig-Bing奇形と大血管転位型のfalse Taussig-Bing奇形に分類されている。

両大血管下型

心室中隔欠損が大動脈弁及び肺動脈弁両弁の下に位置する。大動脈弁下型と肺動脈弁下型の中間に漏斗部中隔が位置し、漏斗部中隔は欠如するか低形成である。

遠位型

心室中隔欠損が傍膜様部流入部に位置する。心室中隔欠損の上縁が正常大動脈径以上離れている。

手術法

姑息術

新生児期、乳児期に根治が難しいと判断された症例では姑息術を必要とすることが多い。肺動脈狭窄がないものでは肺動脈絞扼術を、肺動脈狭窄がありチアノーゼが高度なものでは体肺短絡術をおこなう。

根治術

大動脈弁下型

図2
図2
左室から心室中隔欠損を経由して大動脈弁へ血流を導く心内トンネルを作成する。通常経右房的に作成可能である。左室流出路狭窄を発生させないことが大切であり、心内トンネルのパッチとしてはe-PTFE人工血管をかまぼこ型に裁断したものを使用する(図2)。心室中隔欠損が小さい場合には心室中隔欠損を前方に拡大する。漏斗部中隔の切除が必要なこともある。肺動脈狭窄を伴うものでは右室流出路形成を行う。

肺動脈弁下型
図3
図3

original Taussig-Bing奇形では大血管スイッチ手術か川島手術が、false Taussig-Bing奇形では大血管スイッチ手術かPatrick-McGoon手術が適応となる。

  1. 大血管スイッチ手術(Jatene手術)(図3-①) 肺動脈弁下の心室中隔欠損を血流が左室から肺動脈弁に導かれるように閉鎖する。大血管転位症の時と同様に上行大動脈と肺動脈をスイッチすると同時に冠動脈の移植を行う。大血管転位型では肺動脈を大動脈の前方に移動させるLeCompte法が用いられるが、大血管関係がside-by-sideの場合(original Taussig-Bing奇形)左肺動脈の狭窄を招来する可能性がありoriginal Jatene法を用いた方がよいことがある。ただし、左冠動脈が後方のバルサルバ洞から起始している場合にはoriginal Jatene法を用いると術後に冠動脈の圧排、屈曲を来すことがあり注意を要する。
  2. Patrick-McGoon手術(図3-②) 川島法同様、心室中隔欠損から大動脈への心内トンネルを作成する方法である。トンネルが肺動脈弁の外側を通るようなパッチを作成する方法であるが、流出路狭窄を合併しないようにトンネルを作成することが難しく、現在では前述の大血管スイッチ手術を行うことが多い
  3. 川島手術(図3-③) 心室中隔欠損から大動脈への心内トンネルを作成する方法である。肺動脈弁と三尖弁の間にトンネルを作成するので、術後の左室流出路狭窄をきたさないためには、両弁の間の距離が正常大動脈弁輪経以上あることが望ましい。パッチはe-PTFE人工血管をかまぼこ型に裁断したものを使用する。漏斗部中隔は可及的に切除する。
両大血管下型
図4
図4

心室中隔欠損から大動脈弁への心内トンネルを作成するが、通常右室切開が必要となる。パッチはe-PTFE人工血管をかまぼこ型に裁断したものを使用し、漏斗部中隔が欠如している場合には肺動脈弁輪部を縫合線に用いる(図4)。必要に応じて右室流出路をパッチ拡大する。

遠位型

図5
図5

心室中隔欠損と大動脈弁の距離が長いので右室容積は正常以上の大きさが必要となる。心室中隔欠損が小さい場合には前上方に拡大する必要がある。パッチはe-PTFE人工血管をかまぼこ型に裁断したものを使用する(図5)。三尖弁や僧帽弁のstraddlingを伴うものや三尖弁の乳頭筋が大動脈弁下に存在するもの、多発性の肉柱部心室中隔欠損を伴うものでは心内修復は困難であり、右心バイパスの適応となる。


図の出典

角秀秋:両大血管右室起始法.先天性新疾患手術書.安井久喬監修.角秀秋、益田宗孝編集.頁182-191.メディカルビュー社.東京.2003

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